The Herod Times: パールシークレット、北へ!

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新たな門出

2021年3月、ヘロド/Herodの血を現代に伝える有力種牡馬パールシークレット/Pearl Secretの新たな挑戦が始まった。この日、パールシークレットは、英国中部のノース・ヨークシャーにある家族経営の牧場において、新加入の種牡馬としてお披露目されたのだ。

別記事の通り、パールシークレットは、ヘロド-ウッドペッカー/Woodpecker―(12代略)―トウルビヨン/Tourbillon-(5代略)-インディアンリッジ/Indian Ridge-コンプトンプレイス/Compton Placeと継承された始祖の末裔である。最近になってセントサイモンの子孫がヘロド系だと判明するまでは、パールシークレットの失敗は即ヘロド系の、すなわちサラブレッド三大父系の一角の滅亡に繋がるとまで考えられてきた希少の血筋であった。

現役時代にテンプルステークス(英G2)を制したパールシークレットは、ウスターシャーのチャペルスタッドで種牡馬生活を送っていた。チャペルスタッド時代の最終的な種付料は3,000ポンドであり、僚友のコーチハウス/Coach House、ヘルヴェリン/Hellvelyn、プラントゥール/ Planteurらとともに大物を出すべく奮闘していた。ちなみに、この中ではデインヒルダンサー/Danehill Dancerの息子プラントゥールが競走成績では他を圧倒しており、2011年のガネー賞(英G1)を含む重賞4勝、仏ダービーやドバイワールドカップなどの大レースで何度も掲示板に顔を出している。ただし、種牡馬としてはあまり成績が振るわず、G1競走の勝者は出ていなかった。

チャペルスタッドにいる間、パールシークレットは2020年に初年度産駒が相次いでデビューしたが、複数回勝利を挙げる馬は出ていなかった。そんな状況での移籍は前向きとは言えないかも知れないが、移住先となるノートングローブスタッドはこの貴重な血筋の種牡馬を温かく迎え入れた。現オーナーのリチャード・リンウッド氏とマギー夫人が経営する牧場は、古くから競馬産業との関りが深いノートン・マルトンの街にある。牧場はリンウッド家の三世代の家族のほか、長年の顔なじみの人々によって切り盛りされ、年間60頭~90頭の仔馬の生家となっている [1]。3月はちょうど新しい命が生まれる時期であり、パールシークレットも数多くの当歳馬を目にするだろう。

ノートングローブスタッドの種牡馬は、パールシークレットの他に3頭。自身は未出走馬ながら、英国のマイル~中距離G1レースを10勝し、14戦無敗で引退した偉大な名馬フランケル/ Frankelを父に持つソガン/Sogann。リステッド競走の勝ち馬で、世界的名種牡馬ガリレオの息子フォーエバーナウ/Forever Now。2003年のデューハーストステークス(英G1)と2006年のフランク・E・キルローマイルハンデキャップ(米G1)を制したミルクイットミック/Milk It Mickである。このように見渡すと、古株のG1優勝馬(ただし、種牡馬としては振るわない)が1頭、あまり実績のない種牡馬が2頭といった構成は古巣のチャペルスタッドと類似している。比較しても仕方がないが、彼らの種付料は概ね1,000ポンドから3,000ポンドであり、フランケルやガリレオのような第一級の名種牡馬と比べれば2桁も安い。パールシークレットが再びヘロド系の勢いを取り戻そうとするならば、奇跡以上の物が必要なのだ。

とはいえ、古来サラブレッドと人のいずれが欠けても成功はあり得なかった。この温かい住処がパールシークレットに新たな活力を与え、数多くの良駒が巣立っていくことを期待しよう。

参考文献

[1] http://nortongrovestud.co.uk/

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