旅の終わり:コンプトンプレイス/Compton Place

夜空に浮かぶ古い神殿
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生涯

競走成績

2015年のその日、21歳の種牡馬コンプトンプレイスは英国のホワイツベリーマナースタッドで疝痛のため死去した [1]。だがそれは、望外の成功を収めた一介の格安馬が幸福な生涯を終えただけでなく、18世紀の名種牡馬ヘロド/Herodの血を現代にまで伝える数少ない末裔が、最後の柱石を失ったことを意味していた。

現役時代は6ハロン(約1,200メートル)以下の短距離路線で活躍したコンプトンプレイスは、1994年に英国で生まれた。父はヘロド直系最後の大種牡馬インディアンリッジ/Indian Ridge。インディアンリッジ自身も短距離重賞を3勝した程度の二流馬だったが、種牡馬入りするやナショナルステークス(愛G1)を制したディフィニットアーティクル/Definite Article、ブリーダーズカップマイル(米G1)やムーラン・ド・ロンシャン賞(仏G1)などGr-1競走を4勝した名牝リッジウッドパール/Ridgewood Pearlらを輩出し、格安種牡馬とは思えぬ大活躍を見せていた。

1996年にデビューしたコンプトンプレイスは、初戦を幸先良く勝ち上がると、2つのG2競走で2着に入線し、5戦2勝2着3回の成績で2歳シーズンを終えた。次年度の飛躍を期待させたコンプトンプレイスだったが、初戦こそ2着に入線したものの、8年前に父インディアンリッジが制したキングススタンドステークス(英G2(現在はG1))では見せ場なく12着に敗れ、関係者を落胆させた。ところが、ニューマーケット競馬場で行われたジュライカップ(英G1)では激走を見せ、同年にカルティエ賞最優秀スプリンターを受賞するロイヤルアプローズ/Royal Applauseらを相手に人気薄で快勝する番狂わせを演じた [2,3]。続くナンソープステークス(英G1)では再び14着に敗れたものの、柔らかい馬場が合わなかったと擁護する声もあった [4]。しかしながら、翌年の4歳シーズンは掲示板に乗ることすらできない惨敗が続き、コンプトンプレイスは、ジュライカップはまぐれ勝ちとの批判にさらされたまま引退することとなった。

種牡馬として

ハンプシャーのホワイツベリーマナースタッドで種牡馬入りしたコンプトンプレイスは、現役時代の悔しさを晴らすように続々と活躍馬を輩出した。まず、ゴッドフレイストリート/Godfrey Streetが2005年に2歳重賞のフライングチルダーズステークス(英G2)を勝ち、2007年にはパッシファイド/Passifiedがサンクレメンテハンデキャップ(米G2)を制した。そして、2008年の夏には6歳のイントレピッドジャック/Intrepid Jackがハックウッドステークス(英G3)を、2歳のProlific/プロリフィック(のち、エイブルスピード/Able Speedに改名)がリッチモンドステークス(英G2)を、6歳のボーダレスコット/Borderlescottがナンソープステークス(英G1)を制覇する固め打ちを見せた。

最終的に、コンプトンプレイスは14世代の産駒から13頭の重賞馬を含む24頭のステークスウィナーを輩出する活躍を見せ、丈夫さとスピードを伝える優秀な種牡馬との評価を確実なものとした。代表産駒には、まずナンソープステークス(英G1)を連覇したボーダレスコットと英チャンピオンズスプリントステークス(英G1)を制したディーコンブルース/Deacon Bluesの名前が挙がるが、両者ともセン馬である。初期の成功馬ゴッドフレイストリートやプロリフィックも去勢馬であり、自身の活躍とは裏腹に、後継者の確保は困難を極めた。結局、ヘロドの血を後世に残す重責は、2015年のテンプルステークス(英G2)を制したパールシークレット/Pearl Secretにほぼ委ねられることとなった。

系譜(トウルビヨン-インディアンリッジ系)

コンプトンプレイス 1994年(英)
12戦3勝:ジュライカップ(英G1)
インディアンリッジ
link
アホヌーラ
link
ヒルブロウ
ノージーネッビオーロ
リトルシンシア
父系に関する注釈
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参考文献

[1] Colic Claims Stallion Compton Place at Age 21, BloodHorse, September 21, 2015.
[2] V. Sheahan, Compton Place for Pace, Montjue.com, September 2, 2008.
[3] A. Graham, History of the July Cup, Eclipse Magazine.
[4] Conditions in favour of Compton Place today, The Irish Times, May 25, 1998.

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私たちがいる限り、ヘロド系は終わらない。
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